真っ黒鍋で出来た美味しい味

「昔おばあちゃんがこれ作ってよく鍋を焦がしよったなあ」と父が言う、「これ」とは「シシトウガラシとじゃこの炊いたん」です。京都では、煮物の事を「炊いたん」と言います。私がものごごろついた頃は、祖母はほとんど料理してなかったのですが、汗だくになって何か炒っているのを見た記憶もあります。アルミの深さがそんなにない両手鍋だったですが、その鍋は黒い焦げが取り切れなくそのまんま母によって使い続けられていました。

 「シシトウガラシとじゃこの炊いたん」はお店ではおばんざいとして大鉢料理やこぎれいな器に盛りつけられてますが、ほんとに普段の料理でたくさん炊いたものを翌日冷えて味がしゅんだものをあつあつご飯と一緒に食べたり、お茶漬けのお漬け物がわりに食べたりしていました。これを食べたいのに最近じゃこが高い目で、じゃこを買えばそのまんま食べなければもったいない気がして煮物に使っていませんでした。先日、お得なじゃこをみつけたので満願寺トウガラシと炊いてみて懐かしい味を楽しみました。

 翌日冷えた「シシトウガラシとじゃこの炊いたん」を食べてもっと懐かしむつもりが、その夕飯時に食べきってしまって、翌日の楽しい味がなくなってしまいました。たくさんの家族で翌日のお昼も食べた「シシトウガラシとじゃこの炊いたん」は、いったいどれくらい炊かれてたのでしょうか。たくさんを炒りつけるので、混ぜるのが大変だったかもしれません。鍋が真っ黒だった理由がわかった様なきがします。