金沢 大友楼の美味しいお料理と和らぎの水


 金沢で、大友楼という料亭へ行きました。私のようなまだまだ修行中の身では、「何年も早い」と思っていた一流の料亭です。とは言え、無理してでも行ってみる価値はあるところでした。建物も風格を感じさせられる佇まいで、少し緊張しながら、一緒に行った方の後ろの方からついて行きました。180年の歴史を持つお店で、代々加賀藩の料理方をされてたこともあり、加賀料理を伝え続けることを大切にされています。
 奥の方の部屋へ案内していただき、掛け軸や屏風やおひな様をじっくり拝見。一人でずっとお世話していただいた仲居さんが、品の良いやさしい方でした。その方が私に「今日は卒業式ですか?」と話しかけてこられ、嬉しいやらはずかしいやらで、また一緒に行ったみんなも笑って少しの緊張がほぐれました。いろんな意味ではこの時期、私にとっても卒業なんで、ぴったりのお言葉ではありましたが...
 濁り酒の入った切り子のきれいなグラスとともに、盛りつけられた小さな庭に感激しました。まだ、その頃は桜が咲いていなかったのですが、桜が添えられていて、その後から出していただいたお料理には、桜がいろんな形で添えられていました。一足早いお花見を美味しいお酒とお料理で楽しむ事ができました。ビールで乾杯した後は、燗をつけていただき、おちょこでゆっくりいただきながら、箸もどんどんすすんで行きました。ひと料理ごと量的にもしっかり作っていただいてたので、早い内から、「お腹ふくれてきた」という声も聞こえてきましたが、ひと皿ずつ趣向が変えられているので、すんなりお腹におさまっては次のお料理を待ってしまえるのでした。
 どれもおいしかったのですが、加賀料理である”じぶ煮”と”大鯛の唐むし”は印象的でした。京都のお料理とは、また違って味がしっかりしたもので、それを良いタイミングで出してこられるのでした。ただ、じぶ煮は牡蠣を使っていただいてたので、牡蠣が体質的に食べられない私は、牡蠣以外の野菜や麩でじぶ煮を味わいました。とろりとした出汁が色んな素材にからまり美味しいひと品でした。”大鯛の唐むし”は、鯛の中に甘辛く炊いたおからが詰められ、蒸されたもので、仲居さんに、丁寧に取り分けていただいたものをいただき、おからの美味しさに感激しました。

 せっかく美味しい地酒もいただいていたのに、お酒の銘柄を聞くのも忘れ、覚えていたのは、”やらわぎの水”でした。輪島塗りの入れ物に入ったお水は美味しくてその水について帰ってから調べよう!と考えていました。きっと金沢の美味しい水のブランドなんだと、帰ってから、お取引先の蔵元さんにその水の話をしていたら、”やわらぎの水”とはお酒の合間にいただくお水の事でチェイサーということで、「どこの水でも”和らぎの水”ですよ」と、教えていただきました。
美味しくお酒をいただくためには、お水を少しいただきながらが、酔っぱらい過ぎず体にも優しいということだったのです。滋賀の水道水でも”和らぎの水”になるのです。せめて輪島塗の水さしを買うべきだったかな....と、思いつつ今度旅行したところで、お酒飲みの私を和らげてくれるステキな器を買おうと、もう決めています。