すき焼きの思い出とすき焼きの楽しみ

すき焼きは、家庭ではご馳走というイメージが強く、また特別なメニューです。いつもはお料理あまりしない「お父さん」が肉の管理や味付けをすることが多いと思います。我が実家のすき焼きも、父の近くに、肉を並べたお皿、日本酒、お砂糖、お醤油が置いてあり、母の近くには丼に水と共に入った麩や糸こんにゃくや野菜のお皿が置かれていました。実家の味付けは、食いしん坊の祖父が、京都の三嶋亭で覚えてきた味付けが家のスタイルとして定着し、そのまた食いしん坊の父もそれを受け継いでいました。すき焼き鍋をあたためて、牛肉の脂の白い固まりを入れてお砂糖を入れ、カラメル状態になったところにお醤油と酒を入れ、まず肉を焼いてはお皿に出していき、肉が全部火が通ったら、その鍋に肉を入れ、父の指示の元で野菜や母のそばにある麩が入れられていきます。母は、野菜の入れ方が多すぎる事がよくあり、「違うなあ〜」と父にしかられていました。東京風の割り下でいつも同じ味に保つという、煮方でなく、材料や時間やいろんな事を確かめながら、味を整えていくといったものでした。お砂糖を加えて、甘すぎたら、日本酒を入れ、味を見て、お醤油を入れて....もちろん、三嶋亭や他のすき焼き屋さんでは、ナカイさんにテキパキと一部始終を御願いできるのですが、我が家では父がそうしてくれていました。父は作ることに一生懸命で、あまり食べないので、おいしそうなに煮えたお肉や野菜を父の器に誰かが入れていました。
 楽しい一時ではあったのですが、子供の時は鍋があまり好きでなかったのと、生卵をつけて食べるということにいっとき抵抗を感じてた頃もあり、煮えてからの話ですが、一人だけ違う食べ方をさせてもらっていました。「生卵をあるゾーンへ入れさせてもらって、半熟にして食べる」これをご飯にのっけても美味しかったので、それを許されるまでの時間が待ち遠しかったです。現在は牛肉を食べなくなって、牛肉のすき焼きというものは今は食べませんが、あの味付けが懐かしくなり、鍋でいい感じの煮汁でうどんやおそばを食べるという事がしたくて、鶏肉のすき焼きをします。そして最近は蕎麦を仕上げに入れるのが気に入っています。蕎麦といっても、すき焼きのおかげで美味しい出汁があるので3つ100円ので十分です。今は生卵も食べるので、すき焼きの出汁が絡まった蕎麦をとき卵につけてツルツルっと食べながら、日本酒を楽しんでいます。